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広辞苑の脳卒中&外反拇指 [医学・医療・雑感小文]

 広辞苑の脳卒中

先年(2008年11月)、『広辞苑』が10年ぶりに改訂されて「第六版」が出たとき早速、ある項目を引いてみた。

「のうそっちゅう【脳卒中】脳の急激な血液循環障害による症状。急に意識を失って倒れ、手足の随意運動が不能となる。脳梗塞(こうそく)・脳出血・蜘蛛膜(くもまく)下出血など。」

─これならまず合格だ。従来の版にはいささか不満があった。

1955年発行第一版の「脳卒中→のういっけつ(脳溢血)」は論外としても(脳卒中イコール脳溢血ではない)、

第二版と第三版の、

「脳卒中 脳の急激な血液循環障害による症状。急に意識を失って倒れ、手足の随意運動は不能となる。脳溢血によることが最も多いが、脳栓塞・脳膜出血でも似た症状が起る。」は、「脳溢血」「脳栓塞・脳膜出血」に違和感を覚えた。

第二版は1969年、第三版は1983年の発行だが、このころすでに「脳溢血」は旧称で「脳出血」と呼ぶのが一般的だった。

「脳栓塞」は「脳塞栓」とするのが正しい表記である。

「脳膜出血」は、第六版のように「蜘蛛膜下(くもまくか)出血」のほうがよかったと思う。脳膜出血にはほかに硬膜下出血・硬膜上出血もあるが、圧倒的に多いのはクモ膜下出血だ。

それよりなにより、「脳血栓」が抜けているのが問題だった。

第四版でも「脳溢血」が「脳出血」に変わっただけで、そのほかの記述はそのまま踏襲され、脳梗塞(脳血栓と脳塞栓)が脳卒中の70%を占める実状にそぐわなかった。

(なお、98年発行の第五版は、CD-ROM版を購入したところ、ディスクにキズをつけてしまい、いま見ることができない。やはり出版物は紙に印刷したものに限る)。

第六版でようやく納得できる説明になった。辞書もまた世につれて変わる一例だろう。

広辞苑の外反拇指

「広辞苑ひもときみるに スモッグといふ語なかりき 入るべきものを」

『広辞苑』の編者、新村出博士の歌だ。

なるほど、1955年発行の広辞苑第一版には「スモッグ」という項目はない。

博士没後2年目の69年発行の第二版には、ある。

同様の例は、「神経症」「夏ばて」「突き指」「花粉症」などけっこう多く、いずれも第二版あるいは第三版で収録された。

だが、「外反拇趾(がいはんぼし)」は第四版にも漏れて、98年発行の第五版でようやく採録された。

「外反拇趾 足の親指が付け根の中足指関節で外方に向いた状態。外翻足(がいほんそく)を伴うことが多い。先天的素因、先端のとがった靴の着用、関節リウマチなどが原因」とあるが、「外翻足を伴うことが多い」というのはどうなんだろう?

外反拇趾が「外翻足を伴うことが多い」などということは、絶対にあり得ない。

外翻足が外反拇趾を伴うのは事実だとしても、いま多くの女性にみられる外反拇趾は、外翻足とはまったく無関係だ。

外翻足とはどんな状態の足か?

『広辞苑』にはこうある。

足首の関節の異常のため足が外向きに固定され足底が外方に向かい、足の外側が床面から離れる状態。外反足。」

どうですか? 

もし、あなたが外反拇指だったら、私の足はそんなふうにはなってないわヨ、とモンクの一つも言いたくなるでしょう。

『広辞苑』は、「外翻足を伴うことが多い」ではなく、「外翻足に伴うことが多い」と書けばよかったのだ。

「を」と「に」、格助詞1個で文の意味内容がまるで違ってくることを、日本の代表的な国語辞典が教えてくれたわけだ。

なお、第六版では新たに「認知症」や「メタボリック症候群」「SARS(重症急性呼吸症候群)」「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」などが収められたが、PSA(前立腺特異抗原=前立腺がんの血液的指標)はない。惜しい!?。
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幸福長寿の三原則 [医学・医療・雑感小文]

平成養生訓24

幸福長寿の三原則

日本人の平均寿命がまた延びました。

男性79.19歳、女性85.・99歳、いずれも過去最長を更新しました。

女性は23年連続世界1位、男性も僅差の3位です。

それだけではありません。

健康寿命」は世界一です。

平均寿命は、ことし生まれた赤ちゃん(0歳児)が何歳まで生きられるかを算定したものですが、健康寿命は、一生のうち日常生活に大きな障害を及ぼす病気やケガなどの期間を推計、平均寿命から差し引いたものです。

つまり元気で活動的に生活できる人生の長さのことです。

このほうが平均寿命よりも価値がある、人生の幸福に直結する寿命だと思います。

WHO(世界保健機関)によると日本の健康寿命は74.5歳(女性77.2歳、男性71・9歳)、国連に加盟する世界192ヵ国のうち最長です。

日本の健康寿命が長いのは、

1 食生活が低脂肪食で心臓疾患が少ない。

2 たばこの影響による肺がんの発生率が低い─からとWHOは分析しています。

それを支えているのが、日本人の高い健康意識だと思います。

いま、私たちの国は、かつてない「健康時代」の真っ只中にあります。

多くの人が、自分と自分の家族の健康に強い関心をもち、これを増進し、保つ努力をしています。

そのことが日本の健康寿命を支える最大の理由だと思うのです。

これをさらに延ばすには、よく食べ、よく動き、よく寝る─の三原則を励行することでしょう。

「健康の基本はなんといっても食生活。日常、栄養のバランスのよい自然の食物をとることだ。

今の日本人には栄養失調はめったに起こらないが、たいてい何かに偏っている。

しかし、成人の偏食を直すのはそう容易ではない。

無理に直そうとすると、かえってストレスになる。

いい年をして、嫌いな物を食べろと強制されたら腹が立つ。

また、一人暮らしだったりすると、なかなか多品種・多品目の食事がとりにくい。サプリメントを活用すればよい」

とは、野本亀久雄・九州大学名誉教授の助言です。

免疫学の基礎的研究の権威で、「生体防御」という考えを提唱、同大学に生体防御医学研究所を創設した人です。

次の「よく動く」は、自分に合った運動を、習慣的に続けることです。

年をとって足腰が弱って歩けなくなったり、疲れやすくなる「生活不活発病」は、言い換えると運動不足病です。

動かないから動けなくなるのです。

といっても、一般の人の過激な運動は禁物。

足腰をいためてしまうこともあるし、体内に活性酸素が生じ、老化やがんの原因になるとも指摘されています。

誰でも無理なくできる運動といえば、ウォーキング。高齢者でも、慢性の病気を持っている人でも、体力や病態に合った歩き方なら何ら問題ありません。

自分の体力に適した早足歩きは、足腰を丈夫にするだけでなく、心肺機能を高め、胃腸の働きをよくし、頭脳の老化防止にも役立ちます。

昔の人も「強い足には冴えた頭脳が宿る」と言っています。歩きましょう!

三つめの「よく寝る」は、適度の休養をとって疲労を翌日に持ち越さないようにしようということです。

不眠症治療の名医、伊藤洋・東京慈恵医大教授(精神神経科)はこう話しています。

「睡眠には四つの役割がある。

一つは体や脳を休めて疲れを解消する。

二つは睡眠中に分泌される成長ホルモンによって、ケガなどを修復し、成長を促す。

三つは記憶を固定する(脳にたまった情報を睡眠中に整理し固定する)。

四つは夢を見ることでストレスを発散させる」と。

♪♪ 眠れ、眠れ、よい子のように……。

さて、そして、もう一つ。

幸福な長寿に欠かせないもの。それは「笑い」と「喜び」です。

笑えば病気とたたかうリンパ球がふえたり、痛みのもとになる血液中の物質がへったりします。

いつも喜びの種を見つけて、よく笑うようにしましょう。

それは誰でも心のもちよう一つで手に入れられる、幸福長寿の最高の妙薬です。

(株)心美寿有夢のPR誌『絆』26号=2008年11月発行=より再録>

●追記  前記の「日本人の平均寿命 健康寿命」は、2008年当時のもので、最新(2014年)の平均寿命は、男性=80.50歳(世界3位)、女性=86.83歳(世界1位)。 健康寿命は、男性=71.11歳、女性=75.56歳で、男女とも1位です。
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猫の問題&バルトネラ症 [医学・医療・雑感小文]

猫の問題

2日遅れになったが、2月22日は「ニャン、ニャンニャン」の語呂合わせで「猫の日」だった。

猫大好き人間の文化人たちが決めたそうだ。

ニャンとものどか、太平楽でご同慶の至りだが、ちょっとヤボな水を差すと、猫には健康上いくつか問題がある。

1は、トキソプラズマ症の感染源となり、妊婦が感染すると新生児にリンパ腺炎や水頭症などが現れることがある。

2は、猫の毛やフケは、ぜんそくのアレルゲンになりやすい。

3は、冬にはやる食中毒のカンピロバクター菌を猫が媒介することがある。

急いでつけ加えるが、これらのトラブルは犬でも起こりうる。犬や猫と遊んだあとは、必ず手をよく洗おう。

犬ではみられず、猫だけで起こるのが「猫ひっかき病(バルトネラ症)」である。

猫に引っかかれたり、かまれたりしたあと、リンパ節が腫れる病気だ。

悪寒(おかん)や発熱などの全身症状がみられる例もあるが、重いものではない。

猫によく接触する子どもがかかりやすい。

狂犬病は現在ほとんど起きてないが、猫ひっかき病の発生は秋から冬にかけて多く、小流行の報告もある。

バルトネラ症

猫に引っかかれたり、かまれたりして起こる「猫ひっかき病」は、1950年にフランス医師が初めて報告した。

92年、原因病原体が、猫の赤血球の中に寄生する「バルトネラ・ヘンセレ菌」という細菌とわかり、「バルトネラ症」とも呼ばれるようになった。

猫が感染しても猫には何の症状も出ないが、2年以上も保菌している。

ある調査では約7%が「保菌猫」だった。

猫に引っかかれて数日後、その部分が発赤し、小さい水疱(すいほう)ができる。

これは自然に治るが、それから2、3週間後にリンパ節が腫れて、発熱、頭痛が起こる。化膿(かのう)することもある。

脳炎になったり、肝臓が腫れたり、パリノー症候群という眼球の異常症状が起こることもあるが、死亡例はなく後遺症もない。

予防法はまず猫ノミを駆除すること。

猫の血を吸ったノミがフンをして菌を猫の体表にばらまき、猫の爪や口の中にくっつき、引っかき傷やかみ傷から人にうつる。

引っかかれたりしたら傷口を消毒し、猫をなでたら手をよく洗おう。
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骨盤臓器脱&メッシュ治療 [医学・医療・雑感小文]

骨盤臓器脱

骨盤の中にある子宮、膀胱(ぼうこう)、尿道などの臓器がだんだんと下がってきて、最終的に膣(ちつ)を通って膣壁と一緒に体外に出てくることがある。

体外に出た臓器の種類によって「子宮脱」「膀胱瘤(りゅう)」「尿道瘤」「小腸瘤」「直腸瘤」に分けられる。

まとめて「骨盤臓器脱」と呼ばれる。

骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸)が落ちないように支えている骨盤底筋群が、出産によって傷ついたり、加齢や肥満によってゆるむことにより、尿や便がもれてしまったり、骨盤内臓器が膣から身体の外へ出てきてしまう。中高年の女性に多くみられる病態だ。

膣(ちつ)の辺に何か異物があるように感じる、午後になると、おなかの中が下がってきたように感じる、座ると陰部の辺で何かが押し込まれる感じがする、尿が出にくくなった、残便感がありスッキリしない、

─といったいままで経験したことのない違和感を覚えることがあったら、骨盤臓器脱かもしれない。

最も多くみられる膀胱瘤では、尿もれや、逆に尿が出にくい、出るのに時間がかかる排尿障害が起こりやすい。

「膣から軟らかいボールのようなものが出てくる感じがする」と訴える人もある。

症状は午後から夕方にかけてひどくなる。

放っておくと、進行することはあっても改善することはない。

一人で悩まず、スパッと思いきって病院へ─。

メッシュ治療

骨盤臓器脱の治療には、手術による根治療法と、リング状の装具(ペッサリー)を膣(ちつ)の中に入れて、臓器を支える保存療法がある。

ぺッサリー療法は、日本では年間七万二千人以上が受けている。

リングは患者の体格や骨盤臓器脱の状態に合わせて選ばれる。

感染や炎症、出血、膣の壁の損傷などが生じることがあるので、定期的な受診が必要だ。

骨盤臓器脱を根治する方法は手術しかない。

以前は患者本人の膀胱(ぼうこう)や子宮の周りの組織を使って補強する手術が行われた。

が、使用する組織そのものが傷んでいるために再発することがあった。

近年、メッシュを使った径膣(開腹しない)手術が普及、よい成績を上げている。

丈夫でやわらかい人工素材で編み上げたメッシュ状のテープで尿道をハンモックのように支えて、尿による腹圧がかかった際の尿道周辺のサポート力を回復させる。

術後の痛みや体への負担が軽く、再発例も少ない。これからの治療の主流になるとみられている。

 手術時間は通常1~2時間、入院期間は約1週間。

むろん健康保険が適用される。

受診は泌尿器科か産婦人科へ─。
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尿もれ克服の日 [医学・医療・雑感小文]

尿もれ克服の日

2月20日は「尿もれ克服の日」でもあった。

尿もれを克服した元患者の団体「ひまわり会」が、

「女性の4人に1人が尿もれに悩んでいる現状をふまえ、女性の尿もれに関する認識を広く一般に深め、尿もれで悩む女性がゼロになること」を目的として設定した。

220を、ニ、モ(2=two→too)、レ(0)と読む語呂合わせだそう。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社がサポートする、女性の健康に関する電話サービス「ウーマンズ・ヘルスパートナー・コールセンター」に寄せられた、1年間の全相談の約31%が「尿もれ」だったという。
尿もれには、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁がある。

腹圧性尿失禁は、重い物を持ち上げたり、クシャミをしたり、笑ったり……など、おなかに圧力がかかり、膀胱がグッと収縮する瞬間、もれてしまうもので、女性の尿失禁の70~80%は、これ。

最大の原因は、出産だ。

出産のときの産道損傷や骨盤底筋(骨盤内におさまっている子宮、膀胱、膣、尿道、直腸などを支え、尿道をしめている筋肉群)の下垂が、年を重ねるにつれて大きくなるのだという。
──であるなら、それはつまり人間のいのちをつないだ、母なるひとの証し、なのである。

子よ、老いた母の尿もれをあだおろそかに思うなかれ!

笑ったりしたらバチが当たるぞ!

もう一つの切迫性尿失禁は、尿意を感じたとたん尿が漏れそうになり(切迫尿意)、漏らしてしまうもので、排尿を調節する自律神経が狂って、膀胱の異常収縮が誘発されるために起こる。

女性では腹圧性との混合型として10%ぐらい、

男性では、前立腺肥大症や前立腺がんの症状として、ままみられる。じつは当方も体験者。その切ない苦痛は、拙著『「がん」はいい病気』(マキノ出版)に笑述した。

人に知られたくない…、トシのせい…、と一人で悩んでいられるご婦人が多いようだが、尿もれは、適切に対処すればかならず改善される。

尿失禁の専門外来、女性泌尿器科、泌尿器科・婦人科連携のウロギネ外来(Urologie=泌尿器科、Gynecologie=婦人科)を訪ねるとよい。

その前に知りたいことなど、ネットで調べたり、電話でたずねたりするのもよろしいでしょう。

「ウーマンズ・ヘルスパートナー・コールセンター」が、「骨盤臓器脱・尿もれ」に特化した電話相談サービス「ウロギネホットライン(無料)」は、

電話番号=0570-056-922

受付時間=月曜日~金曜日(祝祭日を除く)の午前10時~午後4時。

WEBサイトは、http://www.traube.co.jp/
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IgEの背中 [雑感小文]

IgEの背中

古い話だが、石坂公成博士にお目にかかったことがある。

1961年の秋、第5回野口英世賞を受けた中村敬三・国立予防衛生研究所所長に面接取材したさい、

「いい仕事をしている若い研究者」の話も聞いていったら─と勧められ、別棟の一室を訪ねた。

そのとき、免疫の初歩的知識さえあやふやな記者相手に、机上のザラ紙に鉛筆で図式をかいて示しながら、抗原抗体反応のメカニズムをかんで含めるように教えてくれた、柔らかな響きのいい声の持ち主が、石坂・免疫血清室長だった。

翌62年、石坂博士は、米デンバー小児ぜんそく研究所に免疫部長として招かれ、66年、IgE抗体を発見、全米アレルギー学会で発表した。

さらに、IgEから始まる多彩なアレルギー症状の進展を、細胞レベルで明らかにするなどの研究業績によって、74年の文化勲章をはじめ、学士院恩賜賞、全米医学会賞、朝日賞、日本国際賞などを受けた。

そうした報道に接するたび、あのどこかまだ戦後の影が残っていた研究所の一室での、小さな出会いのひとときを思い出すことがあった。

そして97年4月のことだが、東京新宿の厚生年金ホールで開かれた、NTTサイエンス・フォーラムの壇上に、基調講演者の石坂博士を、聴衆の一人として遠目に見る機会があった。

その講演の一部─。

IgE抗体を突き止める研究過程では、さまざまなアレルゲン(花粉やダニなどアレルギーの原因物質)のエキスを皮膚注射し、アレルギー反応の起こり方を観察する実験を、ヒトの生体で行った。

スクリーンにその画像が映し出された。

裸の背中一面におびただしい発疹(はっしん)の群落が並んでいて、一つ一つに番号が打たれてあった。

それらを赤色の点光で指し示しながら解説を加えたあと、博士は、さりげない口調でこうつけ加えた。

「この汚い背中は、当時の私の背中です」

─満員の場内に静かな感動の波が広がった。

 追記。

 さらにずっと後年、日本国際賞を受賞されたときの石坂先生については、当ブログの「医学記者半世紀=忘れえぬ医師・患者の物語」のなかに記しました。

 その部分を再録します。

 さて、そうして、いまから11年前、2000年の4月のことですが、その年の日本国際賞の受賞者の一人に石坂先生が選ばれました。

日本国際賞といいますのは、ご存じのかたもおありでしょうが、鈴木善幸内閣の総理府長官だった中山太郎さんが、「日本にもノーベル賞なみの世界的な賞を」という提言に松下幸之助さんが賛同されて、創設されたもので、母体になる国際科学技術財団は、松下さんのほか、各界の個人や団体からの寄付金を基金にして、その利子で運営されています。

毎年、二つの分野を授賞対象として、世界各国の学者・研究者から推薦された候補者のなかから各分野一名ずつの受賞者を決めています。

この賞を受賞してからノーベル賞に選ばれた人が8人、ノーベル賞受賞後の研究業績でこの賞に選ばれた人が1人いまして、それは江崎玲於奈博士です。ちなみに、賞金は1人5000万円です。

授賞式典は、東京・赤坂の国立劇場で、天皇・皇后両陛下がご臨席になり、衆参両院議長と最高裁長官、つまり三権の長と、所管大臣の文部科学大臣、在日各国の大使、各界の著名人約千人が出席して行われます。

この年、2000年の第16回、日本国際賞の受賞者は、「都市計画」分野のイアン・L・マクハーグという、アメリカのペンシルベニア大学名誉教授と、「生体防御」分野の石坂公成博士、やはりアメリカのラホイア・アレルギー免疫研究所名誉所長でした。

ステージの上には、上手のほうに天皇・皇后両陛下のお席がしつらえてありまして、下手の方に椅子が四つ並んでいて、受賞者席になっていました。

でも、マクハーグ博士の右どなりには同伴の夫人がすわっていましたが、石坂博士のとなりには照子夫人の姿が見えない。どうされたのだろう。まだ式典は始まってなくて、両陛下もお入りになっていられないので、ちょっと遅れてこられるのかなあ、と思っていました。

石坂先生にとって、照子夫人という方は、単に配偶者というだけではなくて、共同研究者ですから、ピエール・キュリーとマリー・キュリー、キュリー夫妻のような関係なんですね。

その人が出席されないはずはないんで、どうされたんだろう? って、記者席の一隅で、気をもんでいたわけですが、そのわけは天皇陛下のお言葉でわかりました。

そのとき記者席に配布された「おことば」のコピーがありますので、おそれ多いのですが、一部を読ませていただきます。

「石坂博士のご研究は、人の血清1㍉㍑中に100万分の1㌘しか含まれていない免疫グロブリンEをその抗体を用いて見出すなど、今日多くの人々を苦しめているアレルギー疾患の解明に大きく貢献し、その成果はただちに診断や治療に応用されるようになりました。

このご研究に大きく寄与された令夫人が、ご病気のため、この席で喜びを共にされないことを誠に残念に思います。

かつて文化勲章受賞に当たって帰国されたとき、お二人にご研究のことを伺ったことが懐かしく思い起こされ、博士のお気持ちを深くお察しいたします。」

このとき、石坂博士のお顔がみるみる紅潮していくのが、記者席からの遠目でもわかりました。

あとで知ったことですが、照子夫人は、長期の療養の必要な病気になられたので、石坂先生は、アメリカでの仕事を辞職されて、照子夫人の郷里の山形へ帰られて、介護をされているということでした。─以下、略─ 
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IgE記念日 [雑感小文]

IgE記念日

2月20日は、アレルギーの日。

1995年に日本アレルギー協会がきめた。

前後1週間のアレルギー週間には、各地の協会支部で患者や医療従事者への啓発活動が行われる。

1966年のこの日、石坂公成・米デンバー小児ぜんそく研究所免疫部長(当時)が、共同研究者の照子夫人とともに発見した、IgE抗体に関する最初の発表を、全米アレルギー学会で行った。

アレルギーの症状は、体の外から侵入した異物(抗原)と、生体内にできた物質(抗体)の反応(抗原抗体反応)によって引き起こされる。

アレルギー疾患で最も普通にみられる1型アレルギー(花粉症や気管支ぜんそくなど)の抗原─花粉、ダニ、カビ、ダイズ、ソバなど─に対してつくられる抗体が、IgE(免疫グロブリンE)であることを、石原博士夫妻は突き止めた。

IgE抗体の発見によって、世界のアレルギー医学とアレルギー疾患の診断・治療は飛躍的に進歩した。

医学の基礎研究が、これほど短期間のうちに臨床医学に反映した事例は、前例がないといわれる。
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帯津先生の「腕ふり体操」 [医学・医療・雑感小文]

 平成養生訓25   

 簡単気功「腕ふり体操」

「私の健康法は、朝の気功に、夜の酒です。毎朝、病院内の道場で患者さんたちと共に気功をします。

25年も続いている習慣です。

そして、夜はビール1本とウイスキーのダブルをロックで2杯飲みます。

これが私に合っているのでしょう。

体をリラックスさせる副交感神経のはたらきを優位にして、免疫力を高めるリンパ球をふやしているように思います」

西洋医学に中国医学や代替医療を取り入れたホリスティック医学(人間まるごとを診る全人医療)を確立、がん治療にすぐれた成果を上げている帯津三敬病院の創設者、帯津三敬先生の言葉です。

なぜ、気功なのでしょうか?

帯津先生のお話はこうでした。

「現代医学では、障害の生じた局所を診るのが、診療の基本になっています。

胃が痛ければ胃カメラをのみ、心臓が苦しければ心電図を撮り、尿の出が悪ければ腎臓や膀胱を調べます。

しかし、人間の臓器はそれぞれ独立しているのではありません。

血液やリンパ球、神経などによってほかの臓器と連絡し、体全体として機能しているのです。

この体全体のつながりを診ながら治療するのが東洋医学です。東洋医学では、生命のもととなるエネルギーを《気》といいます。

気は、経絡というルートを伝わって体内を循環していて、気が滞りなく流れていると、心身ともに病に冒されることなく、健康でいられるといわれています。

体を巡る気の流れを整えることで、自然治癒力(体に本来そなわっている病気を治す力)を増し、生命を維持する─それが東洋医学の考え方です。

気功はそのための有力な手段の一つです。

気功には、自分の養生のために自分で行う内気功と、気功師が患者に気を送り治療する外気功があります。

帯津三敬病院で指導しているのは、動きを伴った内気功です。

その一つ、初心者に最適な気功〈スワイショウ〉をご紹介しましょう。

スワイショウとは、〈腕をポーンとほうり投げる〉という意味の中国語で、早くいえば腕ふり体操です。

腕を体に巻きつけるように振るだけなので、わざわざ気功教室で習うまでもない。

体力がなくても、場所がなくても、だれでも簡単にできる体操です。

効果はすぐに実感できます。

緊張している肩や腰をゆるめ、背骨の両側の筋肉もほぐれて、血流がよくなり、知らぬ間に足腰も鍛えられます。

むろん、そうした目に見える効果だけでなく、精神を安定させ、体内の気を高めて、自然治癒力を向上させる効能もあるのです。

帯津三敬病院の気功教室では、必ず最初に全員でこの腕振り(スワイショウ)をやります。やり方はこうです。

1 両足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。ひざの力は緩める。

2 両手をしぜんに垂らし、背骨を軸に腰を右に回す。その腰の回転と共に腕を振り、体に巻きつけるようにする。巻きついてきた手を体にポンと軽く当てる。

3 右側に回り切ったら、今度は左側へ腰を回す。腕も同じように振り、手を体にポンと当てる。

4 体を正面に戻し、2の動作に戻る。

往復10回くらいから始めて、慣れてきたら30~40回くらいやるといいでしょう。

1日に何回やってもかまいません。

ポイントは腰です。

肩や腕に力を入れず、腰が左右に回るにつれて、ぶらん、ぶらんと手が回り、体に巻きつくような要領で行います。

回すときに重心がぶれないように注意しましょう。

呼吸は、片側に回すときに吸い、逆側に回すときに吐きます。

腕の一往復で一呼吸となるわけです。

終えるときは、呼吸を徐々に長く静かにしていき、その呼吸のゆっくり度に合わせて体も回転させます。

呼吸が落ち着いてから終りにします」

タレントの林マヤさんは、

「おなか周りが引き締まります。ちょっと太ったかな? と感じたらふだんより多めにやります」と雑誌『壮快』に書いていました。

(株)心美寿有夢のPR誌『絆』27号=2008年11月発行=より再録>
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袋の炎症 [医学・医療・雑感小文]

袋の炎症

大腸に「憩室」があると言われた身内の者に「年をとれば誰にでもできるんだ。心配いらない」と答えたあとで、ちょっと心配になって調べた。

『広辞苑』にも、「十二指腸・結腸に多く、しばしば炎症(憩室炎)をおこす」とある。

だが、専門書によると、十二指腸にできる憩室は、炎症を起こすことはまれで、治療の必要はない。

小腸にできる先天性の憩室はメッケル憩室と呼ばれ、2歳までの幼児期に発見されることが多い。

大腸の憩室には上行結腸にできる右側憩室と、下行結腸およびS状結腸にできる左側憩室があり、日本人には右側結腸が、欧米人には左側結腸が多くみられるという。

大腸の憩室は、年をとるにつれてできやすく、同時にたくさんできやすい。

憩室ができても普通は無症状だが、憩室内に腸の内容物がたまって炎症を起こしたり、穴があいたり、出血したりすることがある。

憩室の発生や憩室炎を予防するには、便秘をしないのがいちばん。

野菜をたくさん食べ、七分づきの米やはい芽米を常食し、リンゴをよく食べるのもよい。
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大腸の袋 [医学・医療・雑感小文]

大腸の袋

毎度お世話になっているのにこう言ってはナンだが、『広辞苑』には、どうも硬くてお歯に合わないところがちょくちょくある。

たとえば―、

「憩室 食道・胃腸・気管・膀胱(ぼうこう)・尿道など管腔(かんくう)性の臓器に見られる限局性の腔拡張」なんてのが、そうだ。

同じ語を『新明解国語辞典』で引いてみると、「憩室 消化器の一部が袋のように飛び出してふくれたもの」とずっと平易で明解だ。

が、残念ながらこの説明、明解ではあっても正確ではない。

「広辞苑」が言うように消化器以外の臓器にできる憩室もあるからだ。

しかし、最も普通にみられるのは、十二指腸、小腸、大腸の憩室だから、実際的な説明としてはこれでいいのだろう。

大腸の内視鏡検査を受けた身内の者から、「ケイシツがあるって言われたけど、どういうこと?」と聞かれて、

「大腸の袋みたいなものだよ。心配いらないと思うよ」と答えた。

半分無責任な私的意見はそれとして、本当はどうなのか、「広辞苑」にお伺いを立てたところ、冒頭の説明に出合ったワケ。
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