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葛根湯の威力 [それ、ウソです]

 それ、ウソです(39)

 葛根湯の威力

 ちょっと風邪気味かな、と思ったら、熱があろうがなかろうが、直ちに葛根湯(かっこんとう)を飲んで横になってしまう。(諸井薫『恋愛相談』=文春文庫)


 これは漢方の診断法に即して厳密にいえばマチガイ=ウソである。

 だが一概にウソだと決めつけることはできない。

 これはホントでもあるのである。

 以下、その理由─。

 漢方の治療は、病人の体質と症状を総合し、それに最も適応する薬方(これを「証」と呼ぶ)を診断することによって行われる。

 葛根湯は、「漢方の聖典」といわれる『傷寒論(しょうかんろん)』に出ている薬で、次の4点に合致する場合に用いる─と記されてある。

 ①中等度以上の体力(漢方では「実証」という)がある人で、

 ②頭痛、悪寒、発熱があり、

 ③汗の出る気配は全くなく、

 ④首の後ろがこっている。

 ─これを「葛根湯の証」という。

 だから「熱があろうが、なかろうが、直ちに葛根湯を飲」むのは、この原典の記述に照らすと、マチガイであり、ウソである。

 だが、しかし、「ちょっと風邪気味かな」というひき始めの風邪のとき、「熱があろうが、なかろうが、直ちに葛根湯を飲」むのは、あながちマチガイではない。

「ひき始めの風邪だったら、もう〈証〉もなにもおかまいなし、すぐさま葛根湯を飲めば6割は治ります。

 言い換えると、風邪の初期の6割は〈葛根湯の証〉なのです」と、漢方の大家として知られた故藤平健先生は言っておられた。

 ─というわけで、引用した一文はウソであり、ホントでもあり、昔から葛根湯が風邪の名薬とされている所以(ゆえん)でもある。

 風邪だけではない。

 先に挙げた四つの条件が揃ってさえいれば、葛根湯は、鼻炎、中耳炎、耳下腺炎、気管支炎、片頭痛、肩こり、神経痛、歯痛、湿疹…など、いろいろな病気や症状にとてもよく効く。

 で、どんな病人にも当てずっぽうに葛根湯ばかり出す「葛根湯医者」は、江戸時代にはヤブ医者の別名だった。

 でも、これは半面、葛根湯の適応症がいかに多いかを示す証拠ともいえる。

 藤平先生は、

「私は、仕事が猛烈に忙しく、寝る間も惜しいというようなときは、風邪をひいてなくても葛根湯を飲みます。

 すると、心身ともにぴんと張り切り、眠気が去り、集中力が持続するのです。

 長時間、書き物などしていると、首の後ろがこってくるものですが、それもすっとほぐれます」とも言っておられた。

 葛根湯のその〝覚醒剤的効果〟は、葛根湯の成分の一つ、麻黄(まおう)の作用だろう。

 麻黄は、交感神経興奮剤エフェドリンの原料である。

 なお、拙著『名医が治す』(マキノ出版)にも記したが、漢方についての私の浅薄な知識のすべては、藤平先生晩年の約20年間の折々に著述の手伝いをさせていただいたさいに得たものである。

 忘れてはならぬ学恩と心に銘じている。
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